自分に合った園を見つけるための3つの視点

「もっと子どもと丁寧に向き合える保育がしたい」
「人間関係に悩まず、安心して働ける職場がいい」
「家庭と両立しながら、長く続けられる園に出会いたい」
保育の現場で働く人の数だけ、“理想の職場像”があります。そしてその理想は、決して夢物語ではなく、視点を変えることで手が届く現実になっていきます。
このコラムでは、自分にぴったり合った園を見つけるための「3つの視点」をご紹介します。転職や復職、初めての就職を考えている方にとって、園選びは人生の質を左右する大きな決断です。少し立ち止まり、自分の価値観と向き合いながら、じっくり読み進めてみてください。
1. 「理念と保育観」が自分の価値観と共鳴するか
園ごとに掲げる「保育理念」や「食育方針」は、その園が日々の保育や業務で大切にしている“心の根っこ”です。つまり、それを理解することは、その園でどんなふうに働くかを理解することにつながります。
たとえば――
- のびのびとした自由保育を重視し、子ども自身の選択を大切にしている園
- 規律と生活習慣を重視し、一斉保育の中で日々のルーティンを丁寧に守る園
- 地域とのつながりや自然体験を保育の核にしている園
同じ「保育」といっても、そのアプローチはまったく異なります。理念と実践が一致している園ほど、職員の意識も統一されており、迷いが少ない働き方ができます。
調理職においても、「子どもに食の楽しさを伝えるため、手作りを徹底」「アレルギー児への対応を重要視し、専門的な研修を導入」といった園ごとの考え方に注目することで、やりがいと責任のバランスをつかみやすくなります。
深掘りポイント
- 理念が“飾り言葉”で終わっていないか、実際の取り組みや行事から確かめてみる
- 面接時に「その理念が日々の保育でどんなふうに活かされていますか?」と質問してみる
- 自分がどんな保育をしたいか、言語化しておくことでマッチング度が見えやすくなる
2. 「人間関係」と「チームの空気」が自分の安心感を支えてくれるか
保育の仕事は、想像以上に“人間関係に支えられている仕事”です。どんなに子どもと向き合う力があっても、協力体制のない現場では、孤独や疲労が積み重なってしまいます。
たとえば――
- 困ったときに、気軽に声をかけられる関係性があるか
- ミスを責めるのではなく、学びに変えられる雰囲気があるか
- 新しく入った人を丁寧に受け入れる文化が根付いているか
見学時に交わされる職員同士の挨拶や、子どもへの声かけのトーン。何気ない日常の中に、その園の“空気感”は現れています。「人が足りていないから」だけではなく、「ここで働きたい」と思える理由が見つかると、自信を持って一歩を踏み出せるはずです。
深掘りポイント
- 「新人の育成方法はどうなっていますか?」という質問は、人間関係のヒントに
- 自分が安心して話せる相手が1人でもいることは、大きな“続ける力”になる
- 休憩中の会話や事務室の雰囲気も見学時にそっと観察を
3. 「働き方」が今のライフステージと調和しているか
保育士も調理スタッフも、体力・気力をフルに使う仕事です。「やりがいがあるから続けられる」とよく言われますが、実際には「無理なく働ける環境」がなければ、その“やりがい”は長続きしません。
園によっては、家庭を持つ職員の時短勤務を制度として認めていたり、シフトの希望を柔軟に調整できたりするところもあります。反対に、行事準備や延長保育による残業が常態化している園もあります。
自分が無理せず働ける条件とは何か、優先順位を整理しておくことで、園選びの判断軸がぶれにくくなります。
深掘りポイント
- 「時短勤務」や「固定シフト」の実施状況を確認
- 書類業務・持ち帰りの有無についても遠慮せず質問を
- 調理職であれば「調理業務と発注の分担」「衛生管理マニュアルの有無」などもチェック
最後に:心地よく働ける場所は、必ず見つかる
自分に合った園を見つけるには、焦らず、目の前の条件だけにとらわれず、「理念」「人間関係」「働き方」という3つの視点から丁寧に見ていくことが大切です。
“理想の園”は、決して特別な場所ではありません。自分が大切にしたい価値観に気づき、それを受け止めてくれる園に出会えたとき、「ここで働いてよかった」という実感が育っていきます。
園選びは、人生をつくる選択です。心が自然と前を向く園に出会えますように。そして、そこが新しいスタートの場所になりますように。