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保育園を選ぶとき、多くの保護者や求人を探す保育士さん、調理スタッフさんが注目するポイントのひとつが「園の行事の多さ」です。華やかで賑やかなイベントは魅力的ですが、その裏側にあるリアルな現場の状況を知ることも大切です。
実際に働く保育士や調理スタッフの立場から見ると、行事が多い園はどういった影響があるのでしょうか。今回はその現実について掘り下げていきます。
一般的に行事が多い園は、「運動会」「発表会」「クリスマス会」「ひな祭り」など、季節やイベントごとに細かく計画が組まれています。子どもたちが楽しそうに歌ったり踊ったりする様子はとても微笑ましいものですが、裏側では保育士たちが毎日、これらの行事に向けて準備や練習に追われています。
ある園では、運動会に向けて毎日1ヶ月以上、園庭やホールで練習を繰り返していました。最初は楽しそうだった子どもたちも、毎日同じことを繰り返すうちに疲れてしまい、「また運動会の練習?」という声もちらほら聞かれるようになりました。子どもたちのストレスも高まっているのが明らかでした。
調理スタッフの仕事も行事によって大きく影響を受けます。普段の給食準備の合間を縫って、イベントのための特別メニューやおやつを考案したり、材料を発注したり、衛生管理を徹底したりと、業務量は普段以上に増えます。
本来、保育園での生活は「日常」を大切にすることが望まれます。子どもたちが日々を穏やかに、安全に過ごしながら社会性を身につけたり、自分のペースで成長したりすることが大切です。しかし行事が多すぎると、保育士は「行事の成功」を意識しすぎてしまい、子どもたちの普段の生活を犠牲にしてしまう傾向があります。
例えば、お遊戯会の前の数週間は毎日練習ばかりとなり、子どもたちは自由遊びや散歩など日常の楽しみを後回しにされがちです。本当に子どもたちに必要なものが「行事」なのかどうか、疑問が湧いてきます。
一方、行事が少ない園の保育士に話を聞いてみると、「毎日の生活をゆったりと子ども中心で進められる」という声がよく聞かれます。大きなイベントに追われることなく、子どもたちの気持ちや興味に寄り添って柔軟に活動を組み立てることが可能になります。
実際に、行事を減らしたある園では、保育士が子ども一人ひとりの成長をじっくり観察し、必要に応じて個別のサポートを丁寧にできるようになりました。子どもたちのストレスが減り、日常の保育がより落ち着いた雰囲気になったという話もあります。
行事が少ない園は調理スタッフにとっても働きやすい環境になります。行事の特別メニューに追われることが減り、栄養バランスの良い日常の給食提供に集中できます。結果として、食事の質が向上し、子どもたちの食生活にもプラスの影響が出ます。
例えば行事を減らしたある園では、季節ごとの行事メニューに追われなくなった調理スタッフが、地元の新鮮な食材をじっくり選ぶ時間を取れるようになりました。結果、普段の給食が充実し、子どもたちが食事を楽しみにするようになりました。
もちろん、行事は全くなくしてしまうべきというわけではありません。行事には地域とのつながりや文化の伝承など重要な意味もあります。ただし、その頻度や内容を再考し、「子どもが中心である」という原則を忘れてはいけません。
行事の本質を見直し、子どもたちが負担なく楽しめる範囲で行うことが理想です。大人が楽しむための行事ではなく、子どもたちが成長し楽しめる範囲でのイベント設定が求められます。
園を選ぶとき、行事の数に目を奪われるのではなく、「日常の保育がどのように展開されているか」をぜひチェックしてみてください。子どもたちの健やかな育ちを最優先に考えると、やはり行事は少ない方が、保育士や調理スタッフにとっても子どもにとっても良い環境を作りやすいと言えるでしょう。
行事の多い園の華やかさに隠された現実を理解した上で、ぜひ自分自身や子どもにとって最良の環境を選んでください。